三陸国際芸術祭2016

三陸国際芸術祭

報告書PDF

三陸国際芸術祭2016

【プログラム1】
100年後のまつりの支度 2016「舟に音を積みこむ。」
<フィールドワーク/作品制作>
7月23日(土)〜8月6日(土)
宮城県気仙沼市唐桑町鮪立周辺
<上演>
8月7日(日)11:00〜12:00
南町紫市場前(街頭パレードは、大友病院前〜紫神社前交差点)
美術家:斉藤道有(気仙沼市) 
ダンサー/振付家:トチアキタイヨウ(東京)
ワークショップ参加者 のべ17名
上演参加者 20名
来場者数 約2,000人
三陸国際芸術祭2015で、気仙沼市唐桑町を舞台に開催された「100年後のまつりの支度」プロジェクト。その過程で発見された「身体」「記憶」をテーマに、今回は「音」を拾い、積み重ね、粗野でありながらも風土そのものの塊となる楽器を制作しました。その楽器を用いながら、8月7日(日)に行われた「第65回 気仙沼みなとまつり」にて作品を上演しました。

【プログラム2】
『三陸国際芸術祭in八戸』
日時: 8月11日(木・祝)14:00~16:30
会場:種差天然芝生地
出演:トブロン農楽団(韓国)、内丸えんぶり組(八戸市)、永浜鹿踊(大船渡市)、法霊神楽(八戸市)
来場者数 約600人
東日本大震災により被災した三陸地域の復興を願い、平成25年に「三陸復興国立公園」に指定された八戸市の種差海岸で、三陸やアジアの郷土芸能が競演しました。天然の芝生地が広がるこの種差海岸は、八戸市民の憩いの場であるとともに、これまで多くの芸術家たちが憧れ、新しい作品を生み出して来た場所でもあります。快晴の中、三陸の海や自然と郷土芸能の大いなるエネルギーが出合い、初の八戸開催となる三陸国際芸術祭を盛り上げました。

【プログラム3】(連携プログラム)
『第42回三陸港まつり』
日時:8月16日(火)13:30〜21:00
会場:大船渡市立三陸公民館駐車場
出演:トブロン農楽団(韓国)、黒岩鬼剣舞(北上市)、川原鎧剣舞(大船渡市)、浦浜念仏剣舞(大船渡市)、金津流浦浜獅子躍(大船渡市)、吉浜鎧剣舞(大船渡市)
主催:三陸港まつり実行委員会
来場者数 約500人
震災の年以降も“鎮魂の祈りと復興の大祈願”をスローガンに、開催を続けてきています。三陸の住民による手作りのお祭りで、三陸国際芸術祭の連携プログラムとして3年目の実施となりました。東北の郷土芸能はもちろんのこと、今年度は韓国のトブロン農楽団を招聘し、国際的な体験もできるお祭りとして定着してきました。また、昼間は子どもたちとの交流の機会を設けるなど、地元のお祭りならではの地域一帯となった国際交流が実現できました。

【プログラム4】
『メインプログラムin大船渡』
 「にわかり」「混沌商店街」など
日時:9月10日(土)10:00〜22:00
     11日(日)10:00〜16:00
会場:岩手県大船渡市盛町界隈
出演:フィリピン国立芸術高校(フィリピン)、サンガル スニ マリシン(インドネシア)、エユセル(インドネシア)、バロンダンス(インドネシア)、ライオンダンス(香港)、浪板虎舞(気仙沼市)、女川港大漁獅子舞まむし(女川町)、内丸えんぶり組(八戸市)、浦浜念仏剣舞(大船渡市)、胡屋・仲宗根遊び獅子(沖縄市)、さんさ踊り清流(盛岡市)、中西レモン(相模原市)、赤丸急上昇(松山市)、ロスホコス(京都市)、北村成美(草津市)
コミュニティダンス:【プログラムナビゲーター】小林あや(イギリス)、【アシスタント】そら(福岡市)、犬楽団、公募参加者32名
美術家:大黒貴之(ドイツ)、原田ミドー(江別市)、三浦のろこ(大船渡市)、前田彬(南城市)
おもてなし道化(ルビ:どぉげ):湯浅文音(東京)、磯島未来(仙台市)、道化にふんしたボランティア
来場者数 約2,000人
歴史のある盛町の町並みを活用し、商店街・蔵・民家・高齢者福祉施設、三陸鉄道など、まちなかで海外の芸能や郷土芸能、現代的なダンスや美術が入り交じり、さまざまな体験ができる機会となりました。また、観客だけではなく、それぞれの地域の演者同士が交流し、互いに刺激し合う機会にもなりました。

【プログラム5】(連携プログラム)
『大船渡復興 北東北三大まつり』
日時:9月10日(土)18:00〜20:30
会場:岩手県大船渡市盛駅前県道
出演:竿燈(秋田市)、さんさ踊り(盛岡市)、ねぷた(弘前市)、Lion Dance“ライオンダンス”(香港)、Barong Dance”バロンダンス”(インドネシア)、浪板虎舞(気仙沼市)、大槌虎舞協議会(大槌町)、女川港大漁獅子舞まむし(女川町)、甫嶺獅子舞(大船渡市)、胡屋・仲宗根遊び獅子(沖縄市)、金津流獅子躍大群舞(奥州市、大船渡市、花巻市、大崎市、横浜市)
主催:一般社団法人三陸国際交流協会
来場者数 約8,000人
被災年から始まった「大船渡復興北東北三大まつり」は、今回で6回目でした。恒例の北東北の三大まつりである「竿燈」「さんさ踊り」「ねぷた」や、海外の獅子舞系団体と三陸の虎舞・獅子舞を招き、国際色豊かな祭りになりました。会場に入りきらないほどのお客様で熱気に包まれていました。

【プログラム6】(連携プログラム)
『リアス・ウェーブ・フェスティバル2016』
日時:9月11日(日)10:30〜13:00
会場:大船渡市民文化会館(リアスホール)
出演:フィリピン国立芸術高校(フィリピン)、さんさ踊り清流(盛岡市)、浦浜念仏剣舞(大船渡市)
コミュニティダンス:
【ナビゲーター】マニシア(福岡市)
【アシスタント】ラタ(新潟)
【音楽】大村恵世
公募参加者51名(仙台市、大船渡市、周辺より参加)
主催:大船渡市
来場者数 約300人
毎年おこなわれている大船渡市民文化会館(リアスホール)の祭り「リアス・ウェーブ・フェスティバル2016」の中、大ホールを使用する部分を担いました。大船渡・陸前高田・仙台から集まった親子によるコミュニティダンス作品やフィリピン国立芸術高校生、地元郷土芸能団体が互いに演舞を発表し、交流しました。

【プログラム7】
『三陸国際芸術祭in六本木アートナイト2016』
「シシの系譜」
日時:10月22日(土)12:00〜13:30
会場:六本木ヒルズアリーナ
出演:臼澤鹿子踊(大槌町)、バロンダンス(インドネシア)、ガムラングループ・トゥラン・ブーラン(横浜市)、今津雅晴(東京)、磯島未来(仙台市)、田中望(山形市)
入場者数 約1,000人
六本木アートナイト2016のプログラムの1つとして、臼澤鹿子踊(大槌町)と、インドネシア・バリ島の獅子バロンとガムラン楽団が共演する作品「シシ※の系譜」を上演しました。郷土芸能・民俗芸能の宝庫である、岩手県とインドネシアからシシたちが出会うことで新しい演目を模索しました。また、鹿子踊を習ったコンテンポラリーダンサーが鹿子の動きから独自のダンスを生み出していました。
※シシ 獅子舞の獅子。バリ島に伝わる獅子の姿をした聖獣。臼澤鹿子踊では鹿を指す。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
総出演者数:のべ48団体 のべ約1,090名
総来場者数:のべ約14,510人  

実施の成果
●バリ、香港、沖縄など三陸だけではなく、各地のシシが集合。芸能を通したアジアと国内の繋がりを創ることはとても有意義だと思った。それはこれまで地域の郷土芸能だった故に、ほとんど外に出たことがなく、他の地域の芸能がどうなっているのかの情報交換の場がなかった。しかし三陸国際芸術祭によってであったことによって、知り合いになり、互いに情報交換が生まれ、そして同じシシでも各地各様に違う形式を持っていることに、実際に郷土芸能をやられている人たちが発見があったという。
この発展形として、今回、岩手県大槌町の『臼澤鹿子踊』とバリ島のバロンダンスが東京・六本木アートナイトにおいて共演・発表したことは、歴史的に大きなことだったと思う。
●全国には、まだまだ被災地に対して何かできないかと思っている方々が多くいる。郷土芸能に限らず、コンテンポラリーダンサーも同じ思いのものが多い。そういった表現者が被災地に足を運び、それぞれの表現方法をもって鎮魂の思いを伝えることができた。また、現地の方々との交流の機会にもなり、こういった人と人の繋がりが発展していくきっかけとなった。
例:郷土芸能とコンテンポラリーダンス(沖縄の再会、浦浜念仏剣舞が韓国に行きたいという思いが生まれる、など)
郷土芸能を良く知らなかった人はもちろんのこと、日常の当たり前のこととして活動していた芸能団体の方にも、あらためて郷土芸能の持つ意味を再確認する機会となった。三陸国際芸術祭は、ある意味、文化芸術による復興、のひとつの大きな象徴となってきている。
●今回コミュニティダンスを2作品制作した。1作品は昨年のコミュニティダンスの演出家、小林あやが地元の一般の方々、障害のある子どもたち、中学生、高校生など、昨年から参加していた人たちと新たに参加した人たちが、ダンスを通して新たなコミュニティの形成に繋がっている。同時に、1年目のコミュニティダンスの演出を行ったマニシアは、赤ちゃんとお母さん、娘さんとお父さんの組み合わせで公募をし、仙台を含め、約25組50人の参加があった。これは継続していることによって、毎年楽しみにしている方々がしっかりと存在し、自分たちでダンスを創るグループを創ろうという動きになっている。
●一方、今回八戸での開催、そして大船渡のメインプログラムへ八戸と女川の芸能を招いたことにより、大船渡を軸に八戸から女川までネットワークが生まれ始めている。このことは三陸国際芸術祭としては大きなステップで、被災をした三陸の各地域をつなぐネットワークを形作っていきたいと考えている。同じように、韓国、インドネシアなど継続して招いていることにより、確実に芸能を行っている人たちの新しいコミュニケーションが生まれている。新たにフィリピン、香港など、アジアの芸能のネットワーク作りが始まっている。
●三陸、日本、アジアの郷土芸能団体とアーティストが、東日本大震災による甚大な被害を受けた三陸沿岸部に集い各々の芸を披露することで、自らの芸能や芸術が社会にとってどのような役割を担っているかを真摯に思索し、そのうえで社会が必要とし復興には何が有効であるかを共に考えることが、文化芸術による復興と、芸術文化を基にした新たな産業の創出の礎となることが期待できる。
●郷土芸能が新たな産業となる可能性。移住者など、その地域に新たに入ってきたものがコミュニティに入るためのきっかけとしての効果(気仙沼:もともとある祭りや芸能のコミュニティに入ることの敷居は高いが、新しく立ち上げる企画には参加しやすい)。
●身体表現によるルーツの類似性を知ることで、国籍を超えた人類の歴史を学び、表現方法の多様性を見出すことで、各々の思考的、技術的に水準向上を促進することができる。
●メインプログラムである盛町の“混沌商店街”では、芸能団体とコンテンポラリーダンスが、同じ会場で上演されたことにより、互いの作品を観る機会が生まれ、交流にとどまらず、即興のコラボレーションが自然に生まれるなど、これまでは起こりえなかった、コンテンポラリーダンスと郷土芸能の融合が生まれた。このことはコンテンポラリーダンスと郷土芸能の歴史の中で大きな出来事。お互いの類似性を知るきっかけとなった。
●本芸術祭を2020年まで継続して行い、様々な郷土芸能を日本全国、世界へと紹介すると共に、芸能を通して被災地間そしてアジアとのネットワークを培っていくことを目指したい。
●東京での実施による三陸の郷土芸能の発信。各地でのシンポジウム等への参加による全国への周知。三陸沿岸の小中学校へ、各地の教育委員会の協力による全校チラシ配布。共同通信による三陸国際芸術祭の記事(タイトル:転換への一歩、岩手県沿岸部の郷土芸能:外に開かれた新たな歴史)が全国(山形、愛媛、京都、岐阜など確認できただけでも10紙以上に掲載された。

一覧へ戻る